手術時の麻酔について
当院では、母体保護法指定医である院長が、麻酔のきめ細かいコントロールも含めて人工妊娠中絶手術をすべて行っています。お身体への負担をできるだけ軽減しながら、「気付かないうちに終わっていた」と感じられるように心がけています。
中絶手術は麻酔によって術中の意識がないため、局所麻酔のように手術中に痛みを感じることはありません。手術中に意識が戻ってしまうことはなく、手術終了後はできるだけ早く覚醒できるよう、麻酔を厳密にコントロールしています。また、術後の痛みもできるだけ軽減できるようにしています。
当院の中絶手術は、お身体への負担を軽減しているため日帰りで受けられます。そのため、あらかじめ患者様の年齢や病歴、服薬している薬、体質などをしっかり考慮した上で麻酔処方を行っています。適切な鎮静剤や鎮痛剤の選択には特に病歴・既往症に注意する必要があり、高血圧・糖尿病・ぜんそく・てんかんなどの疾患や状態に合わせた処方が不可欠です。そのため、カウンセリングの際にしっかり患者様のお話をうかがっています。お薬手帳をお持ちの場合には事前診療の際に必ずご持参ください。
また手術中には血圧や呼吸、心電図など全身状態をモニターしながら厳密にコントロールしています。全例への酸素導入を行っており、不整脈や呼吸抑制が起こるようなことがあっても気道確保などの適切な処置が素早く行えるようにしています。
麻酔の種類について
局所麻酔
痛みを感じさせない麻痺状態を部分的に起こすための麻酔です。主に傷を縫うなどの外科処置や歯科治療など術野が狭い手術に用いられています。また、細かいコントロールが難しいため、2時間以上の手術には向いていません。
静脈麻酔
鎮痛と眠っているような状態を同時にもたらし、ウトウトと眠ったような状態にします。短時間で痛みが軽い手術に適している麻酔法で、全身麻酔とは異なります。ただし、静脈麻酔では手術中に強い痛みが起こった場合、目を覚ましてしまう、身体が無意識に動いてしまう危険性があります。また、長時間行った場合には、大量の麻酔薬を使用することになり、呼吸困難を起こすリスクや術後の覚醒が遅れるリスクが高くなります。全身状態を厳密にコントロール可能で、短時間に行うことができ、痛みが軽い手術に限れば、とても有効な麻酔法です。
ブロック麻酔(腰椎麻酔・硬膜外麻酔)
体の中心にある脊髄の神経束に少量の麻酔薬を注入して神経の根本をブロックし、手術中の比較的広範囲に及ぶ痛みを取り除く麻酔法で、腰椎麻酔と硬膜外麻酔があります。主に帝王切開や虫垂炎など、下半身の手術に用いられることが多くなっています。使用する薬剤は少量ですが、術後に頭痛や低血圧を起こすリスクがあるため、麻酔の知識や経験が豊富な医師が行うことが重要です。
全身麻酔
広範囲の手術、長時間の手術に適した麻酔法で、筋弛緩と鎮痛麻酔を用います。鎮痛麻酔はガス麻酔剤が多く用いられ、手術中は全身状態の厳しいコントロールが不可欠です。年齢や状態、病歴、服薬歴、体質などを十分に考慮した上で、知識と経験が豊富な医師による全身麻酔であれば安全性が高くなります。
安全な麻酔のために
事前診療時には下記のようなことをうかがいます
- 高血圧・糖尿病・ぜんそく・てんかんなどがある、または以前なったことがある
- 不整脈・心臓病・甲状腺機能亢進症・呼吸器疾患・アレルギーなどがある
- 普段、薬を服用している(血圧の薬、血液をサラサラにする薬、向精神薬、睡眠薬など)
- 過去に受けた麻酔・歯科麻酔で効果が出にくかった
- 飲酒量が多い、お酒に強い、飲んでも酔いにくい
上記のようなケースでは、特別な薬剤を使うなど適した処方を変えないと麻酔が効きにくくなってしまったり、安全に行えないなどのリスクがあります。お身体への負担を最小限に抑え、安全で痛みのない手術を行うために、事前診療時にはこうしたことに関しても丁寧に伺っています。なお、普段薬を服用してる方は、お薬手帳をご持参ください。お薬手帳が見つからない場合には、飲んでいるお薬をそのままお持ちいただいても大丈夫です。